マルク・シャガールは1887年7月7日、ユダヤ系ロシア人として生まれました。
1985年97歳で亡くなるまで、彼はロシア革命や二つの世界大戦勃発という激動の20世紀を生き抜き、その中で沢山の芸術作品を残しました。
シャガールといえば、明るく鮮やかな色彩と空中に浮かぶ男女のイメージという幻想的な絵画を思い出します。
こうした作品は、直線的で冷たい近代建築の内装によく見られる抽象絵画に劣らず、多くの人に好まれ、壁に飾られています。
数多くある絵画の中で、19世紀から20世紀にかけて活動した彼の作品がこれ程人気を博すのは、シャガールの稀有な才能と魅力によるものでしょう。
シャガールの生きた時代は、他の巨匠たちが活躍した時代でもありました。
例えば、ピカソやダリなどです。
シャガールは1910年に芸術の都パリに移り住んでいます。
彼は、そこでキュビズムの影響を受け、もう一つの特徴である色彩とともに、彼自身の芸術の確立の基を造りました。
シャガールの画風を見ると、シュールレアリスムとの共通点を指摘されることが多いようです。
遠近法を無視した画風や宙に浮かぶ人間など、まるで夢に出てくるような風景を見ると、シュールレアリストたちに大きな影響を与えたフロイトの夢占いを思い起こすからです。
しかしシャガール自身はシュールレアリズムからは一線を画し、生涯独自の道を歩みました。
シャガールの芸術にとって大きな意味を持ったのは、妻ベラの存在です。
またユダヤ人がたどった第二次大戦での苦難も彼の意識に影響したはずです。
彼の作品に宗教的色彩が見られるのは、ユダヤ系という彼自身のルーツや、トルストイやドストエフスキーを生んだロシアの伝統を受け継いでいるからでしょう。
愛の画家といわれるシャガールの作品には、彼の生い立ちと時代に翻弄された人々の息遣いが込められているのです。