現在のベラルーシ共和国である白ロシアに生まれたユダヤ人のシャガールは、幾何学的な形の中に色の三原色と様々なモチーフを込めた絵画を初期に描いています。
これは、キュビスムを意識していたことによるもので、例えば、子供の頃よく食べていた三日月型のパンという、クロワッサンよりもバターを多く含むパンを販売していた田舎町のパン屋を描いたシャガールの絵は物語的で、キュビスムの影響を受けていたことがうかがえます。
彼の作品は、豊富な色が使われていて、回想や空想の内面世界を表現したものが多いため、シュルレアリスムの先駆者の一人とも評されています。
1910年に故郷ヴィテブスクからフランスに渡ったあと、アトリエを構えて作品を制作しつつ、詩人との交流も盛んに行っていました。
第二次世界大戦中の1942年にはパリからアメリカに亡命し、ニューヨークのバレエ団の依頼で深い青色が特徴の背景画も描いています。
そして、バレエの舞台装置や衣装作りの他に、彫刻や陶芸、版画も制作していて、また、最愛の妻ベラとの結婚直後には、幸福感や愛、喜悦を含んでいる、町の上で、ヴィテブスクという油絵作品を残しています。